育メン坊主のひとりごと

太釈さんが答えます。
太釈さんの似顔絵
Q.子どもに優しさやマナーを教えたいと思いますが、どうしたらいいですか?
A.心あたたまるいい質問ですね。子どもに優しさやマナーを教えたいと思っても、どうしたらよいのか分からないことも多いでしょう。
ある私立の幼児園に通う子どもと親の会話です。
親「掃除のおばさんに“ありがとう”を言うんだよ」
子ども「どうして?」
親「掃除は自分でするものだよね。でも、掃除のおばさんが代わりにやってくれている。これは“ありがとう”だと思わないかい?」
子ども「うーん、たしかにそうだなぁ」
後日、子どもを幼児園に迎えに言ったお父さんは、掃除のおばさんに呼び止められます。
「あなたが、この子のお父さんですか?」
お父さんは息子が失礼なことでも言ったのではないかと察しました。とりあえず、謝らなければ。
「息子が何か失礼なことを言ったかもしれません。申し訳ございません」
すると、掃除のおばさんは顔の前で手をぶんぶん振りながら否定します。
「いや、その逆なのですよ」
掃除のおばさんによれば、園児の中でお父さんの子どもだけが「いつもありがとう」と掃除のおばさんに礼を言うのだそうです。他の園児たちは、掃除のおばさんが存在しないかのように振る舞ったり、「邪魔だからどいてくれ!」ということを言ったりするそうです。
お父さんは、園児たちの態度や言葉づかいに開いた口がふさがらなかったのですが、我が子がどうやら掃除のおばさんに誉められているようだと気がつきました。掃除のおばさんは、一度でいいから息子の親の顔を見てみたかったとのこと。最後は掃除のおばさんはうれし涙を流しながら、どこかへ行ってしまいました。
たった五文字の「ありがとう」はとてつもない力を持っているのですね。

緩和ケアにおいて薬剤師に求められること その6

前回は、薬剤師倫理でも説かれている「より良く生きる」とは、医療の手立てがなくなった後も希望を持って生きていくことだと思うと書きました。

薬剤師倫理における最も重要だと私が考えるポイントは、下記の部分です。

「責務の根底には生命への畏敬に発する倫理が存在するが」

特に「畏敬」という言葉を使っていることに私は注目しました。命を守ることは基本的な人権です。人権の根底にあるのは、生命に対する畏敬の念であると書かれているのです。

では、何に対して畏れ敬うのでしょう。

つづく

緩和ケアにおいて薬剤師に望まれること その5

人生の残り時間が少ないことを知ったとき、どのように過ごしたいですか?

私の書籍『一日一善』より「鮎が食べたいねえ」を紹介します。

九十才になる「はなさん」の例を紹介しましょう。

はなさんは膵臓がんと診断され、あと一ヶ月の命だと医師から告げられました。はなさんは入院はイヤだと断り自宅で過ごしました。はなさんは在宅医療でがんの痛みを取る鎮痛剤を使いながら過ごしました。はなさんは、ガンによる痛みのコントロールができると、体調の良い日には健康なときと同じように生活できました。はなさんは、孫やひ孫に囲まれて日増しに元気になっていきました。

体調の良いある日、はなさんは美容院に行って髪をふじ色に染めました。次に向かった先は写真館でした。はなさんは、「いつどうなるか分からないから」と遺影のために小首をかしげて写真に収まりました。

写真を撮って数日後、はなさんは「鮎が食べたいねぇ」と言って、夕食にお嫁さんに鮎の塩焼きをおいしそうに食べました。食後は大好きな歴史小説を読みながら、

「明日も朝が早いから、もう寝たら。」

と、はなさんが身の回りの世話をしているお嫁さんに声を掛けたのが、最後の言葉となりました。

はなさんは、夕食に鮎を食べた翌日、往診した医師の問いかけに応じることなく眠り続けました。

往診した医師ははなさんの孫たちを枕元に呼んで、

「おばあちゃんは天国へ行くの。耳は聞こえるからそばで大きな声で話しかけて」

と言いました。

孫たちは、大きな声で、「おばあちゃん、ありがとう」

はなさんへの「ありがとう」と「さよなら」が一つになった瞬間でした。はなさんは、「花のように死にたい」と言っていました。その言葉通りに、通夜の席で孫たちの声が響きました。

薬剤師倫理でも説かれている「より良く生きる」とは、医療の手立てがなくなった後も希望を持って生きていくことだと思うのです。

つづく