相手を想像する

新刊『人を想うこころ』~人生で大切な恩と供養の話~ が平成29年10月1日に発刊されました。

本書の一部を先読みしてもらえるようブログで公開いたします。
なぜ、供養をしなくてはいけないのか。
なぜ、恩が大切なのか。
本書で気づいてもらえるとうれしいです。


相手を想像する

目が不自由な人は、どうやって周りの状況を知るのでしょうか。

 

私がある小学校でPTA講演会の講師をさせてもらったときの出来事です。講演の開始時間には少し早かったので、私は校長室で校長先生と談笑していました。すると廊下から別の先生の声がします。どうやら誰かを案内しているようです。しかし、案内している話の内容が「こちらへどうぞ」ではありませんでした。

 

「あと5メートルぐらい真っ直ぐです」「左側にドアがあります」「ここが入口です」「段差がありますよ」という具合です。誰かを言葉で誘導しているようでした。

 

私の居る校長室に入って来たのは上品そうな女性でした。シックな洋服に身を包んでいます。しかし、私と目線が合いません。わたしは、あれ?と思いました。校長室に入ってきた女性は、ゆっくりとソファの位置を確認しながら腰を下ろしました。校長先生が「講演、お世話になりました」と女性に声をかけています。私は黙っていましたが、女性は「あれ?もう一人誰かいる」という顔をしました。

 

私は「ああ、もう一人誰か居ることが分かるんだ」と思いました。私が身にまとっている衣に染み込んだ線香の匂いを感じ取ったのでしょう。女性が校長室を出たときにはなかった匂いです。私は、校長先生に促されて、女性にあいさつをしました。女性はびっくりした様子でしたが、同時に納得したようです。校長室には確かに誰かもう一人居るはずなのに、相手が声を出さなければ女性には相手の存在を確認できなかったのです。

 

普通に考えれば、気味の悪いことですね。私は、女性と入れ替わりに会場へ移動するため、校長室を後にしました。

 

目の不自由な人は、視覚以外の感覚が鋭いものです。匂い・音・触った感じが敏感になるようです。目の不自由な人は、物の形や人の顔を手で触って頭の中で形を思い浮かべるのです。