高野山の昔話「数取り地蔵」

昨日のゆったり寺ヨガで一口法話をさせてもらいましたので、こちらで内容をシェアします。
 
高野山に伝わる昔話「数取り地蔵」
 
高野山奥之院にいたる道は2つあります。1つは広い駐車場があり石の鳥居をくぐって歩いて行く「中の橋」、もうひとつは昔からある奥之院にいたる「一ノ橋(いちのはし)」です。
 
最近は観光バスで中の橋駐車場から歩くことが多くなりました。距離も短く歩きやすいからです。10月18日(日)に大師号下賜1100年記念で写経奉納式に出席するため奥之院へ向かいました。久しぶりに一ノ橋から歩いてみました。
 
一ノ橋から入ってすぐあたりに数取り地蔵というお地蔵さんがまつられています。数取り地蔵は手に数珠を持ち奥之院にお参りする人を数えていました。
「今日は10人奥之院にお参りに行って、10人帰ってきたな」
 
ところが、数取り地蔵は奇妙なことに気がつきました。
ときどき10人奥之院にお参りに行ったはずなのに、7人しか帰って来ない日があるのです。それも、夕方から夜にかけてお参りに行った人が帰ってこないことが多かったのです。
 
そこで数取り地蔵はお大師さまにお参りに行った人が帰ってこないことがあることを相談しました。数取り地蔵は数珠で数を取っているから間違いないと自信満々です。
 
お大師さまは奥之院からのお参りで帰ってこない人が多い夕刻から夜にかけて参道を歩いてみました。すると確かに物の怪のような不穏な気配があります。気配はだんだん強くなっていき、やがて山肌と思っていたところに赤い目がぎょろりと2つ現れました。そして細くて赤い舌をちょろちょろさせているのです。
 
そこにいたのは大蛇でした。大蛇が奥之院にお参りする人をひと飲みにしていたのです。お大師さまは数珠を摺りながら真言を唱え始めました。
「ノウマクサンマンダバザラダン センダマカロシャダソワタヤウンタラタカンマン」
そうです。不動明王の御真言です。
お大師さまの身体はみるみるうちに不動明王へと変わっていき、炎で大蛇を追い詰めました。
 
大蛇も負けじと火炎を吐き応戦しますが、お大師さまの法力には適いません。ジリジリと追い詰められやがて洞窟へと追い込まれました。お大師さまは持っていた竹箒で「エイッ」と大蛇を洞窟へと封じ込めてしまいました。
 
お大師さまは数取り地蔵のところへ戻り、大蛇は洞窟に封じ込めたから心配ないことを伝えました。ただし、とお大師さまは言いました。
「大蛇を封じ込めるときに竹箒を使ったから、掃除をするときは竹箒は使ってはいけないよ。大蛇が封印を解いて出てくるかもしれないからね」
 
それからというもの、奥の院の参道を掃除するときは竹箒を使わずクロモジの箒を使うようになったそうです。
 
ところが、先月私が奥の院の参道を歩いていたときボランティアで掃除をしておられる方は竹箒を使っていました。今はお大師さまのご加護があるので、大蛇の心配をすることなくお参りできるようになったのでしょうね。